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史跡の駅 おたカフェ

東京は国分寺。自然広がるお鷹の道沿いに、人が集う街の休憩所「おたカフェ」があります。さあ、豊かなコミュニティづくりの見本を覗いてみましょう。

東京は国分寺―、緑濃いお鷹の道沿いに
人が集う街の休憩所「おたカフェ」がある
東経大の学生が接した、地域のコミュニティのかたち

史跡の駅 おたカフェ の物語り

01

変わりつづける国分寺

偶然出会ったかわいいお店

変わりつづける、国分寺駅周辺。 

ぼくが東京経済大学を卒業し、戻ってきた頃には、
まったく違った表情を見せていることだろう。 

思い出の街が変わってしまうのは、少し寂しいことだけれど、
時代の流れからしたら、仕方がないのかもしれない。 

そんなことを考えながら、駅から南の方に散歩していると、
街の様子が一気に変わってきた。 

―お鷹の道。
小川が流れ、緑があふれている。 

国分寺にも、こんなところがあったんだ。
大学に通って2年以上も経つのに、全然知らなかった。
せっかくなら、もっと早くに知っていたかったな。 

そう思いながら歩き続けていると、
一軒のかわいらしいお店が見えてきた。 

「史跡の駅 おたカフェ」―。  

 おたカフェ? 

お鷹の道にあるから、「おたカフェ」、なのかな?
ぼくは、その不思議な名前が気になって、
店内に足を踏み入れてみることにした。

21

街の休憩所

“お宝”と、“お楽しみ” 

店内を見回すと、
そこには国分寺オリジナルの物販が置かれ、
ギャラリーが飾られていた。 

どれも目を引き付けるものばかりで、
なんだか見ていて、ほっとする。 

どうやらここ「おたカフェ」は、無料休憩所で、
周辺の史跡地域の総合案内などを行っており、
街の人々の、出会いの場になっているらしい。 

ぼくは、近くにいる店員さんに声をかけ、
気になっていた名前の由来を聞いてみた。 

「『お鷹の道』にあるから、『おたカフェ』、です。
でも、それ以外にも、
『お宝(“おた”から)』や『お楽しみ(“おた”のしみ)』
といった意味も含まれているんですよ」 

“お鷹の道”は当たりだったけど、それ以外に、
“お宝”や“お楽しみ”、などといった意味も込められていたんだ。
おもしろい。 

―ここでしか味わえない“お宝の時間”を
“お楽しみカフェ”で、ゆっくりと過ごす。 

なんだかとっても、素敵だな。

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ちいさなビンが季節を告げる

自然の恵みに、感謝して 

ぼくはもう一度、店内を見回してみた。
すると、ちいさくて鮮やかなビンが目に留まった。 

「それは、おたカフェオリジナルのジャムとピクルスですよ。
国分寺で採れた野菜や果物を使っているんです」 

へえ。 

国分寺でも、こんなに豊かに野菜や果物が採れるんだ。
店員さんは、話を続ける。 

「農家さんが困っていたんですよ。
いっぱい採れ過ぎちゃって、捨てなきゃいけないとか、
形が不揃いで、スーパーが受け入れてくれないとかって」 

食べられるのに捨てられてしまうなんて、もったいない。 

「農家さんにとって、
自分たちが作ったものを捨てなきゃならないのは、
本当に苦しいことですから。
農協さんからも、どうにかならないかってお願いされていて。
だから、それを使わせてもらうことにしたんです。
ジャムやピクルスにすれば、
季節によって採れ過ぎていたものを平準化することが出来ますし」 

なるほど。
農家さんにとっても、捨てるはずだったものを、
活用してもらえるということは、うれしいことに違いない。 

「ジャムやピクルスに、何かこだわりはありますか?」 

「そのままを楽しんでもらいたいから、
ジャムは果肉をゴロゴロにしています。
パンにはちょっと塗りづらいくらいなんですけど。 
また、余計なものを混ぜていないので、
スーパーのものとは違って長くはもたないんですけど、
あえてそうすることにより、
旬のものをその時期にだけ売るようにして、地元の人々に、
旬の季節を感じてもらえるようにって思ったんです」 

そっか。
スーパーでは年間を通して店頭に並べられるから、
旬の時期はわからないけれど、
その時にしか売っていなければ、季節感が実感でき、
自然の恵みに対する感謝の気持ちも生まれる。
そして、感謝の気持ちを抱ければ、いっそう、おいしく頂ける。 

そんなふうにして、自然のことや、
買う人の“こころ”のことまで考えているなんて、すごい! 

このちいさなビンの中に、
自然の恵みへの感謝と、地元の生産者さんへの思いやりが、
きゅっと詰まっているんだ。

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はじまりは“おもてなし屋台”

街の“すきま”を利用して 

ここ、「おたカフェ」は、もともとは、屋台からはじまったらしい。
今あるお店の前に、屋台を出して、
コーヒーやカレーを販売していたそうだ。 

でも、どうして、屋台だったのだろう。
「おたカフェ」設立の発起人である、
オーナーの高浜洋平さんに聞いてみた。 

「もともと、『自分の住む街くらいよくしたい』という
想いがあったんです。
そこで、都心にたくさんある
“すきま”を利用して、屋台を出せば、
地域活性化出来ないかと、考えたんです」 

「すきま?」 

「“すきま”とは、土日の市役所や銀行の駐車場など、
普段、利用されていない場所のことです。
国分寺で言えば、駅前再開発の予定地などですね。
それらを、地域活性の場として、利用できるんじゃないかって」 

なるほど。
普段は使われていない場所を、有効活用しようというわけだ。 

「そこで市に提案したところ、お鷹の道を活性化させてほしいと、
逆に依頼されたんです。 
それから2年間、平日は会社に勤めながら、
毎週日曜日に、屋台を出すようになりました」 

当時の名前は、「おもてなし屋台」。 

「この活動が少しずつ注目されはじめ、
3年目に、市から空き家になっていたこの場所を
使わせてもらえることになり、
2007年に、現在の、『おたカフェ』ができたんです」

なるほど。「おたカフェ」ができるまでには、
いろんな背景があったんだ。 

平日は会社に勤めながら、休日に屋台を出すなんて、
中途半端な気持ちでは、できないはず。 

高浜さんの、
“街をよくしたい”という想いが、
じんじんと、胸の奥にまで伝わってきた。

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水の学校

「おたカフェ」は、伝える

「おたカフェ」では、「水の学校」という講座が開かれている。
生徒さんは30人ほどで、高浜さん自身が、水の歴史に詳しい専門家や、
企業の方を講師として招いているそうだ。 

でも、どうして“水”の学校なんだろう? 

「ここで屋台をやるまでは、そこの小川の水が名水百選であること、
さらに、小川が流れていること自体、知らなかったんですよ。
自宅が国分寺駅の北口方面にあり、
普段の生活は自宅と駅の往復だったので。 

きっと国分寺に住むほとんどの人が知らないんじゃないのかなって。
だからこそ、名水百選に選ばれるほどきれいな水が、
この西東京の地にもあるということを、伝えたかったんです」 

北口方面で一人暮らしをしているぼくも、
今日まで、国分寺にこんなに自然あふれる場所があるなんて、
知らなかった。 

「おたカフェ」は、ここで、
“コミュニティ”を作り出すとともに、
地域の人びとに、“国分寺の魅力”を発信し続けている。

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“これから”の国分寺

みんなの顔が見える街へ

 ―「街のコミュニティをつくりたい」

―「国分寺の魅力を伝えたい」 

「おたカフェ」は、間違いなく、
この2つの想いからできている。 

2年間も、地道に屋台を出し続けてきたことからも、
その想いの強さを感じることができる。 

ぼくは最後に、
これからの国分寺がどうあってほしいか、
高浜さんに聞いてみた。 

「みんなの顔が見える街であってほしいですね」

そう言って高浜さんは、にっこりとほほ笑む。
―みんなの顔が見える街。 

そんな街にしていくために、
地域のみんなが、出逢え、笑顔で集える場所を―。
「おたカフェ」は、その役割をしっかりと果たしてくれている。 

ぼくは今日、国分寺の街の、“これから”の姿を、
見せてもらったような気がした。 

地域が持つ魅力を再発見し、
それをコミュニティの中でたいせつに育てて、
さらに、外へ外へと、繋げていく。

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