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2015.07.09

神山町の地方創生

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石破大臣を地方創生担当大臣に向かえ、内閣府地方創生本部にて“地方創生元年”と位置付けられた平成27年。この年に徳島県神山町は、安倍政権にて閣議決定されたふるさと版地方創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」を公開。戦略策定には、自治体の若手職員と住民を対象としたグループが協働会議にてアイデアを出しあい、連続的でかつ拡張性と継続性を伴う地方創生事業が決定されたのです。

そんな徳島県の山間部にある小さな町「神山町」が、「地方創生における奇跡の町」として注目を浴びていることをご存じですか?
神山町は町域の約83%が山間地域にも関わらず、全町域に光ファイバー網を整備しており、CATVとブロードバンド回線の普及率はなんと全国1位!
これら最先端情報インフラの整備により、首都圏のICT関連企業が神山町にサテライトオフィスを設置するようになり、2011年には人口の転入が転出を上回るようになりました。過疎化に頭を悩ます町としては史上初、「サテライトオフィスを活用して、定住促進活性・人口増加を実現した全国唯一の成功事例」として、注目を浴びることとなったのです。このサテライトオフィスの活用をさらに推進させる後押しとなったのが、安倍内閣にて2014年11月に可決、成立された地方創生関連2法案です。地方創生関連2法案とは、「まち・ひと・しごと創生法案」及び「地域再生法の一部を改正する法律案」の二つの法案のことです。改正地域再生法では、本部機能を地方に移した企業を税制優遇する内容が盛り込まれており、企業移転への注目度を加速させるものとなりました。

徳島県神山町は大自然に囲まれた山間地域のため、勤務者のストレスや賃貸料などの固定費を減らすことも可能。ここでは1つの限界集落が地方の創生のために目標とした、ICTを全面的に活かすサテライトオフィスをご紹介いたします。

サテライトオフィスとは何か?

サテライトオフィスとは、企業や組織団体が都会にある本拠地から離れた所に設けた拠点や事務所のことです。サテライトオフィスでは、ICTを活用することで場所や時間にとらわれない柔軟な働き方である「テレワーク」が可能となります。徳島県ではサテライトオフィスを県内に新規開設する企業に対して、様々な補助金や助成金を用意。さらに、企業側がサテライトオフィスを持つ主なメリットは以下の6つです。

  1. 時間の効率化
  2. 固定費削減
  3. 経営機能のバックアップ(リスク分散)
  4. 人材確保
  5. 企業のイメージアップ
  6. ストレスフリーな生活

メリット1:時間の効率化

東京都内に勤めるサラリーマンの通勤時間は平均58分であり、通勤に1時間以上かかる人は半数以上いると言われています。満員電車となると、その時間にかかるストレスは相当なもので、特に女性には仕事の成果に大きな影響を与えると問題視されています。
その点、移動の少ないテレワークであれば通勤時間の無駄とストレスを省くことができます。
神山町では、古民家や遊休施設をサテライトオフィスとして貸し出しています。都心と違って敷地も広いため、本人は母屋に住み、離れを職場にするといった職住接近の環境が整っているのです。

メリット2:交通費などの固定費削減

都心と違って電車を何本も乗り継ぐなどの通勤にかかる費用を、削減することができます。また、都心部に事務所を構えるよりも敷地は広く、かつ賃料を安くすることが可能です。
神山町の場合、上述した通り古民家をサテライトオフィスとして貸付しているため、徒歩圏内に職場を設けることが可能です。

メリット3:経営機能のバックアップ

台風や地震などの自然災害が起こった際には、本拠が1箇所であると大きなリスクにさらされます。本拠が被害を受けると、その企業の活動が全て止まってしまうからです。そういったリスクを避けるため有効なのが、サテライトオフィスです。サテライトオフィスは経営機能のバックアップとして活用することができるため、本拠が被害を受けても事業を停止しないで済みます。このため東日本大震災以降は特に、危機管理の一環で地方に第二の拠点を持とうとする民間企業が増えているのです。
企業がサテライトオフィスを構えようと考えた時に、必須の条件である最先端情報インフラが既に完備されている神山町は、必然的に企業の注目を浴びるようになったのです。

メリット4:人材確保に有利

近年、都心部では良い人材は確保することが非常に困難となっています。IターンやUターンをする人も増えてきているため、地方では良い人材を確保するための幅が広がります。
神山町では、神山塾という政府認定の「緊急人材育成支援(基金訓練)」および「求職者支援訓練」という、人材育成の環境が整っています。卒業生の約半数は神山町へ移住しており、有能な人材が町で活躍することが期待されています。

メリット5:企業のイメージアップ

2015年のデータでは、学生が就職先企業を選ぶ際に重視するポイントとして、「職場の雰囲気」「希望の勤務地で働ける」などが上位にランクインしています。
このため企業がサテライトオフィスを構えていると、社員のライフスタイルが充実した自由度の高い企業という、良いイメージを持ってもらいやすいのです。

メリット6:ストレスフリー

神山町に溢れる大自然の中で勤務することは、都心に勤務する時より大きくストレスを軽減することができます。例えば、満員電車に長時間揺られるストレスは確実になくなります。自宅から程よい距離に勤務することができるため、空いた時間を自分の時間に使い私生活を充実させることも可能です。また、都心と違って空気が澄み緑あふれる環境で生活することは、疲れた心身を癒してくれるのです。カンザス大学の研究によると、3日間でも自然の中にいると創造性や集中力が増すという明確な結果が出ているのです。
近年、うつ病により会社を休まざるを得ない人が増加しています。超ストレス社会の現代、自らに降りかかるストレスを少しでも軽くする神山町のような環境は、仕事への集中力も増す魅力的な環境でしょう。

ICTとは何か?

「サテライトオフィス」を検索していると、ICTという言葉が頻出すると思います。このICTという言葉、聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか。ICTは「Information and Communication Technology」の略で、情報通信技術という意味になります。ICTとITはほぼ同じ意味ですが、ITに「通信によるコミュニケーション」という要素が加わったものがICTになります。
世界的にはICTの方が一般的に使用されていることから、日本でもICTという言葉にシフトしていこうという動きがあります。総務省でも、「IT政策大綱」が2004年から「ICT政策大綱」に改名されています。

このICTは地方創生の切り札になると言っても過言ではありません。神山町は総務省の交付金を利用して町全域に光ファイバー網を整備、CATVとブロードバンドの回線を構築。このICTをうまく活用しサテライトオフィスの誘致に成功したため、「地方創生における奇跡の町」となれたのです。

神山町のサテライトオフィス誘致による相乗効果

現在までに神山町では、サテライトオフィスとして11社のICT企業等の誘致に成功しており、それに伴い30名の地元雇用の創出と32名の移住が成し遂げられました(2015年1月)。
サテライトオフィスの誘致によって、神山町には若年層が多く転入しています。そしてレストランや宿泊施設などのサービス産業の新規開業や、そこで使用される有機農産物の生産の喚起へと繋がっています。
地方創生に繋がるテレワークという新たな働き方の提案と、それに伴うサービス業や農産物の生産の喚起といった相乗効果によって、神山町はバランスの良い持続可能な地域を作ろうとしています。