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新風会事務局長 川崎正さん

1日も欠かさずブログ発信
新風会事務局長 川崎正さんの物語り
島への来訪を誘うブログを毎日発信するうちに、
なかなか入手できないような
貴重な情報も集まるようになった川崎さん。
観光事業者からも重宝されるようなブログになっている。
その秘訣とは?

 01

ブログ継続への原動力

読者の声に支えられ

一つのことを、毎日続ける──。

言うのは簡単ではあるが、同じことを毎日毎日、
継続していくのは難しいものだ。

小豆島には、島の観光を考える「新風会」という組織があり、
その事務局長・川崎正さんは、「小豆島で生きる!」
というブログを2008年2月7日から
現在まで毎日書き続けている。

ブログは手軽に始められるツールであるが、
長く書き続けているという人は少ないのではないだろうか。

「おもしろそうだからやってみようかな」
「日記として毎日書こう」
と考えてスタートしたものの、続けることができなかった……
という経験がある人もいるだろう。

「忙しい中、継続するのは正直しんどいときもありますよ。
『忙しいんだから、やめたら?』
という、心の声が聞こえるときもあります。
けれど、いろいろなところで、
『ブログを見ていますよ!』
という声をかけていただくと、
がんばろうという気持ちがわいてくるんです」

そう言って、川崎さんは微笑んだ。

 02

自分のための記録から

誰かのための記録へ

高校進学で一度島を離れ、
結婚を契機に再び小豆島に戻ってきた川崎さん。
父親が経営する清掃用品の会社を手伝いながら、
趣味のテニスやサッカーをして、郷里でゆったり過ごしていた。
そんな中、経営のことも学ばなければいけないという思いを抱き、
後継者向けの経営塾に参加した。

「ブログをスタートしたのは、本当に軽い気持ちからです。
経営塾の講師の方が、ブログをやっているとおっしゃっていたのが
きっかけになったんです」

後継者経営者塾に参加して、一番影響を受けたのが、
ブログの話だったと川崎さんは言う。

「ブログの話を聞いているうちに、
『なんだか楽しそうだな』
という感情が芽生えてきて、
自分もやってみようかなって思ったんです」

ブログをはじめてから一ヶ月後、
父親の会社を引き継ぎ、社長に就任する。

「社長になるからブログをスタートしたわけではなく、
全くのプライベートで書き始めたんです」

当初、ブログの記事は
日々の出来事を綴る日記のような内容だった。

「テニスやサッカー、家で飼っている猫のこと、
どこに出かけて楽しかった、何を食べておいしかった……。
そんなことを綴っていましたね」

そのブログの記事に対して、
ぽつぽつとコメントがつけられるようになった。
その中で川崎さんはあることに気づいたという。

 03

どこかの棚に牡丹餅がある!

情報を得るための秘訣

「島でイベントがあり、
そこに参加した記事を掲載すると、
『残念やなぁ……知ってたら行きたかったのになぁ』
というようなコメントが多く寄せられたんです」

事前に知っていたら──
この言葉に川崎さんの頭の中で、
『告知的な内容の記事も書いてみようか』
という思いが浮かぶ。

今、川崎さんは自分が足を運ぶ予定以外の
イベントについてもブログで発信している。
催し物だけではなく、
小豆島の景観や見どころなども紹介されていて、
観光従事者の人が参考にしているほどだ。

常にアンテナを張っていなければ、
さまざまな情報を入手するのは難しいと思う。

川崎さんは、
どのようにして情報を集めているのだろう?

「思いがけぬ幸運が舞い込んでくることを、
『棚から牡丹餅』と言うじゃないですか。
でも、棚に牡丹餅があると思っていなければ、
落ちてきても気づかないかもしれない。
僕にとって地域のイベントは牡丹餅と同じです。
落ちてこないかな?
イベント開催の予定はないかな、と思っているから、
落ちてきたことがわかると思うんです。
常にアンテナを張っていることで、
情報が巡って来る」

情報はあちらこちらで流れている。
けれど、それをつかむかつかまないかだけの違い
と言って川崎さんは笑った。

「仕事と一緒だと思います。
自分で営業をかけていたり、気にしていたりするかどうかで、
案件が発注されたときすぐに動けるかどうか、変わりますよね。
棚に牡丹餅があると思っていないと、
気づいたときには、受注できたかもしれない仕事が、
ほかの会社に取られているとかね」

 04

自己の域を超えたご縁

発信することで紡がれるもの

川崎さんのブログテーマは、
小豆島のイベント紹介、
小豆島を舞台にした映画やドラマの紹介、
歴史、旅行、サッカー、読書と
多岐にわたっている。

そこに2015年11月から、
「狛犬」というカテゴリーが加わった。

「『小豆島のこまいぬたち』
という写真展を見にいったことをきっかけに、
狛犬に興味をもつようになりました。
今は時間があるときに、神社を訪れて狛犬の写真を撮っています」

いつの時代の狛犬か、どこから来たのか、石の素材は、
作者は誰か……そんな疑問をブログに綴っていると、
読者から小豆島の狛犬に関する資料を
提供してもらえたことがあったそうだ。

「頂いた資料のお蔭で、私が撮影した写真に、
狛犬の作者は誰で、何年のものでという情報が
ブログの記事につけられるようになったんです」

ブログで小豆島の記事を発信していくことで、
島の情報が自然と集まってくるようになった。

そして、ブログを書かなければ繋がらなかったかもしれない、
多くの人たちとの縁が結ばれてく──。

 05

できる形での奉仕

デジタルボランティア

「以前、人から
『小豆島をどうしたい』
というような思いはありますか?」
と聞かれたことがあるんです」

そのとき、川崎さんは言葉につまり、
うまく話せなかったそうだ。

思いはいろいろとあるけれど、
漠然としていてハッキリしていない。

「わたしは、議員でもなければ、
町長でもない一般人ですが、
聞かれたらすっと答えられる理念はもっておきたいと思いました」

ブログで情報発信して島の魅力を伝え、
島外の方に小豆島に来てもらう。
小豆島内の人にもそこへ行ってもらう。

「そうやって少しでも小豆島の活性化に役立つことで、
最終的に自分の仕事へも還元できれば幸せですね」

川崎さんのブログには、
商品の紹介などは一切書かれていない。
あくまでも、小豆島のことを中心に書いている。

「今やってることは
“デジタルボランティア”みたいなものですかね?」

デジタルボランティアとは、
川崎さんが作った言葉だ。

「今の私には、
実際のボランティアに参加する時間を作れないんです。
でも、朝の7時台なら時間が取れる」

だから、川崎さんは早起きをして、
早朝にブログをアップしている。

 06

小豆島全体の幸せのために

島を知ってもらう方法

「なんとなく」
という軽い気持ちでスタートしたブログだが、
今では毎日2000件以上ものアクセス数を誇る、
人気ブログとなった。

記事を綴る中で、その内容が変わっていき、
同時に川崎さんの気持ちにも変化が生まれる。

「今は、小豆島全体の幸せのためにブログを書いていますね」

会社の経営理念を
「小豆島全体の幸せのために」
としている川崎さん。
高校進学で島を離れる前は、小豆島が大嫌いだったと言う。

「こんな田舎にいられるか!ってね」

それが、小豆島に戻ってきて、島のことを発信するうち、
小豆島の魅せられている自分自身に気づいた。

小豆島の道、地区の名前……、
島の外の人にも、島に住んでいる人にも、
たくさん知ってほしいと思うようになった。
まずは小豆島を好きになってもらうようにと考えながら、
川崎さんは今日もブログの記事のネタ探しをしている。

読書の時間が減ってしまったけど、
早起きとブログはこれからも続けていきたいと、
川崎さんは話す。

ブログを書くことが、川崎さんの人生にとって、
大きな意味のあるものであるのは間違いないようだ。

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