杜氏職人
西尾孝広
200年の歴史が語る
喜多屋は江戸時代末期に八女に創業して今日まで約200年酒を造り続けてきました。社名及び商品名にしている「喜多屋」は、創業の際「酒を通して多くの喜びを伝えたい」という強い志のもと名づけられています。現在の喜多屋の蔵では親と子ほど年の差のある蔵人が毎日会話をして、笑いあったりぶつかりあったりしながら酒を造っています。私はまさに『酒造道即人道』と思っていて。人も酒も勝手に育つ。でもよりよく育たせるためにはサポートとしての「水飲み場」が必要なんです。それを杜氏が率先して作っています。てきぱきと仕事をこなす蔵人達との信頼関係とチームワークこそが、喜多屋の酒造りの根底を支えています。美味しい日本酒は、日々の食生活をもっと豊かにするもの。そして大切な文化です。喜多屋のお酒は、人生を豊かで幸せにしてくれます。
豊かな自然の地に恵まれた八女の地で
南東部には山並みが幾重にも重なり、特産の「八女茶」茶畑と田園風景が広がる中を清流矢部川が流れています。酒造りもお茶づくりにも重要なこの矢部川。自分の家もお茶農家を営んでいました。当時お茶農家は秋までの仕事だったので、仕事が少なくなる冬に喜多屋の蔵人募集に誘われて働くことになりました。最初は冬場の働き口というぐらいに考えていましたが、なかなか辞める理由が見つからないうちに酒造りに没頭していくことになります。転機となったのは、酒造りにおける最も大事な工程と言われる『麹造り』の主任に任命されたこと。その時に酒造りをさらにおもしろく感じるようになり更にのめりこんでいき、いつの間にか自分が作るお酒は社内外からも高く評価されるようになっていました。平成19年喜多屋酒造りの最高責任者である杜氏となり、今年で酒造り歴37年なります。
もろみとの会話
発酵がうまく進んでいることの確認作業が杜氏の日課です。お盆や正月、会社が休みの日でさえも時間を作り発酵過程を見るために蔵に入ります。もろみはね、何も言わんけど何か言いよる。それを聞いてやる。酒造りの主役は人じゃない。酵母や水、米、お酒を造ってくれている菌達。人間はお酒になってくれるための環境作りのお手伝いをしているだけ。もろみの事はもろみが教えてくれる。蔵のことは蔵が全部教えてくれる。何をしてあげたらお酒は喜ぶか。それをしてあげるのが自分達の仕事なんです。酒造りは“せからしか”(八女の方言で“面倒くさい”)の極みなんですよね。喜多屋もいっぱい賞とかいただいたけど、お客様からの『美味しい』って言葉が一番の賞やね。これがあるから酒造りをやめられない。酒は本来、人が生活していく上で必要ないかもしれない。だが美味しいお酒には素晴らしい効能があると思っています。
Profile
西尾孝広 (にしお こうひろ)
1957年 福岡県八女市黒木町生まれ
お茶農家であるかたわら、1983年から季節労働として酒造りに参加する。
平成7年から常勤として喜多屋で酒造りに従事する。
平成19年、喜多屋の酒造りの責任者である杜氏となる。
酒造り歴37年
受賞歴
「大吟醸 極醸 喜多屋」
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2013
日本酒部門第一位「チャンピオン・サケ」受賞
「純米吟醸 喜多屋 吟のさと」
ブリュッセル国際コンクール2018SAKE‐selectionで最高位のプラチナ賞 受賞
1957年 福岡県八女市黒木町生まれ
お茶農家であるかたわら、1983年から季節労働として酒造りに参加する。
平成7年から常勤として喜多屋で酒造りに従事する。
平成19年、喜多屋の酒造りの責任者である杜氏となる。
酒造り歴37年
受賞歴
「大吟醸 極醸 喜多屋」
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2013
日本酒部門第一位「チャンピオン・サケ」受賞
「純米吟醸 喜多屋 吟のさと」
ブリュッセル国際コンクール2018SAKE‐selectionで最高位のプラチナ賞 受賞
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