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コスモイン有機園

この民宿の畑には数え切れない種類の野菜が実り、いろんな国からたくさんの人が集う。採れた野菜はみんなを繋げ、笑顔にする。いのち輝く宝石箱のような畑には素敵な物語りがあった。

この民宿の畑には数え切れない種類の野菜が実り、
いろんな国からたくさんの人が集う。
採れた野菜はみんなを繋げ、笑顔にする。
いのち輝く宝石箱のような畑には素敵な物語りがあった。

コスモイン有機園 の物語り

 08

坂の上の民宿

〜コスモイン有機園〜

小豆島の土庄町、長浜の海を見下ろす高台に来ていた。
山と畑と漁港しかない寒村で、旅人たちを
迎える場所があるという。

晴天の中、両脇を草木が覆う緩やかな
坂道を歩いて行くと、 山小屋らしき建家が
静かに佇んでいた。

「COSMO HOUSE有機園」

かろうじて読める木の看板には、かすかに
「民宿」という文字も見て取れる。

「ごめんください」と声をかけてみると、
小屋の中から女性が出てきた。

のどかな村の風景によく似合う、
太陽のような笑顔をしていた。

012

数えきれない種類の野菜

〜今川さん自慢の畑〜

快く迎えてくれたのは、今川早苗さん。
畑仕事をしつつ、夫である今川二郎さんと
共に民宿を営んでいる。

あいさつもそこそこに、小屋の裏手に
ある畑を案内してくれることになった。
畑へ続く道の途中にも、小洒落た洋風の
ロッジらしき建物が見えた。

生い茂る草をかき分け、今川さんの後ろをついて歩くと、
そこには立派な畑が広がっていた。

畑にいるのが好きでたまらないのか、
今川さんは嬉しそうに解説しながら
農作物の間を進んで行く。

「このピーマンはね」
「これはアフリカのオクラでね」

トマト、なす、玉ねぎ、人参、ラディッシュ、
八朔、サトウキビまで、 次から次へと、
出てくる出てくる。

この畑、八百屋も顔負けの品揃えである。
たくさんの“いのち”が集い、輝き、喜ぶ。
畑はまるで、宝石箱のようだった。

021

二人三脚で荒れ地を開墾

〜難しい有機畑に挑む〜

「25年前までは、荒れ放題の土地やったね」

毎シーズン、たくさんの野菜が収穫できる彼女の
畑だが、これは手つかずだった土地をいちから開墾し、
耕したものである。

当初は、害虫はもちろんのこと、無数の木の
根っこが埋まっており、二人は相当な苦労を
強いられたという。

やっとの思いで完成させた畑で、
二人が目指したのは完全な有機栽培。

しかし、20年以上も前の日本では、農薬を使わずに
野菜を育てるなど、まだまだ一般的ではなかった。

何しろ有機栽培は、手間と時間が恐ろしくかかる。
だが、それを乗り越えるからこそ、おいしい野菜が
できるのも事実。

おいしくて安全な野菜を作りたい――。
何度も失敗を繰り返した末、二人の思いは
豊かな実りとなって報われた。

032

よし子とじゅん子は白いヤギ

〜お乳に肥料に大活躍〜

よく耕された、ふかふかの土を踏みしめて歩いていると、
鳥のさえずりに混じって「メエェ、メエェ」と元気な
声が聞こえてくる。

この有機園で飼われている二匹の白ヤギである。
近づいてみると、干し草と肥料の匂いが鼻をついた。
繋がれた紐をピンと張り、ヤギは人懐っこそうに
こちらへ首を伸ばしてくる。

「彼女らには助けられてますね。
彼女らのおかげか、サルが寄ってこんのです」

畑で使われる肥料の一部は、ヤギの糞尿を元に作られる。
それだけではない、彼女たちの出す乳はチーズとなって、
訪れる人たちを喜ばせているという。

呑気に鳴いているだけではない、
二匹はれっきとした働き者なのだ。

042

収穫のその先まで

〜手製の小麦粉〜

畑をぐるりとまわって小屋まで戻って来ると、
今度は後方の納屋から「ゴロ…ゴロ…」と
音が聞こえてきた。

二人の宿泊客が、石臼で小麦を挽いて
粉にしているところだった。

丁寧に丁寧に挽かれるその小麦も、
もちろんここで育ったもの。
市販の小麦粉にはない、いい香りがする。

実は、有機園に滞在する間、農作業を率先して
手伝ったり、 今川さんのもと農業体験を
希望する人は多いという。

今、臼を回している女性二人も、すでに2週間
近く滞在していて、 毎日畑仕事に汗しているという。

「小麦や大麦も、こうして手を加えて小麦粉や麦味噌に
しています。 作物を採って終わり、ではないんです」

と、今川さん。重い石臼を何度も回し、採れたて
の小麦を粉にしていく。決して楽な作業ではない。
とても地道で根気のいる仕事。

それでも今川さんと他の二人は晴れ晴れとしている。

「こんな手間のかかることばかりして生きてます。
それをみんなに食べてもらって、私は余ったものを頂いてます」

いのちの恵みに感謝し、自然の中で
生きることを楽しんでいる顔だ。

052

異国が繋がる場所

〜土は国境を越える〜

下畠さんと一緒に町を歩いていると、
地元の人によく声を掛けられる。
そんな時、下畠さんはとても嬉しそうだ。

鞆になじむ秘訣を聞いてみると、
「お酒は飲めたほうがいいかもしれないですね(笑)」
とのこと。
鞆に来るようになって、飲む量が増えたそうだ。
飲み会では、とにかくひっきりなしにつがれるらしい。

「鞆の街並みも好きだし、お祭りも楽しい。
京都ではお祭りに参加することがなかったから、余計に新鮮です。
それにやっぱり町の人がいい。
出会った人みんなに、本当によくしてもらってます」

京都以外に住むのは、初めてという下畠さん。
今、ここからまた新しい道が始まっていく。
鞆との出会いはまさに人生の大きな転機なのだろう。

祭りの期間中、下畠さんを見かけるたびに、「地元の人」の
顔になっていくように感じた。

ちなみに下畠さんは今、彼女募集中だそう。
きっとここで人生のパートナーに出会うんだろうなぁと
なぜだか、そんなふうに感じてしまう。

夢を叶えた癒し系の青年は、そういう引き寄せのパワーを
持っていそうなのだ。 

0.6

島育ちだから教えられること

〜野菜の生え方、知っている?〜

今川さんのもとには、多くの子ども連れも訪れる。
都会暮らしでは味わえない自然とのふれあいを
子どもにも経験させたい、と家族でやって
来るのだそうだ。

畑仕事という「非日常」に、子どもたちは目を輝かせる。

「最近の子は人参がどう生えているかも知らないんです。
でもここへ来れば、そんな子たちもすぐに慣れて、 楽し
そうに畑仕事を手伝ってくれますよ。 嫌いだった野菜も、
ここでなら食べられると言ってくれるのが喜びです」

生まれ育った小豆島は、今川さんにとって
夢のような場所だという。

「魅力は自然です。山も海も町も風も魚も、みんな
美しくて穏やかで。 こんな場所だからこそ、子供たちには
私の知りうる限りの体験をさせてあげたい」

彼女の畑が育むのは、
どうやら野菜たちだけではないようだ。

07

「いのち」を頂いて生きている

〜“宝石箱”で見つけたたいせつなもの〜

彼女の畑は、まるでいのちの宝石箱だ。
たくさんのおいしい野菜が実る。

子どもも大人も、国籍も関係なく集い、笑顔になる。

「何をどう食べるかというのは、とても大切なことです」

私たちが食べている野菜はこうしてできているんだよ、
土に触れて体を動かすのはこんなに気持ちのいいことなんだよ。

「我々は確かにいのちを頂いて生きています。
たまにでも、そのことを感じて確認するだけで、
もっと多くの方の心が豊かになるんじゃないかな」

コスモイン有機園は教えてくれる。
食べることの素晴らしさ、ありがたさ。
そして、食を通じて人と人、人と自然が交わる楽しさを。

暖かくなったら、おいしい野菜を食べに、
彼女の畑を訪ねてみようかな。

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