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蕎麦酒菜 祥 高橋祥子女将

女将、こだわりの手打ち
蕎麦酒菜 祥 高橋祥子女将の物語り
蕎麦処、会津の地で愛される、女将の手打ち蕎麦
素材や製法にこだわり、経験と勘をたよりに、
真心を込めて地元の味を紡ぎ出す

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会津、ただよう蕎麦の香り

会津若松市の中心、大町。 そこに一軒の蕎麦屋がある。

会津の粋を思わせる、風流な店構え。
暖簾をくぐってまず目につくのは、囲炉裏のある景色。

「蕎麦酒菜 祥」―、それがこのお店の名前だ。

会津で採れたそば粉、地酒や山菜など、 できる限りこの土地のものを。
さらに、お店に出す食材は、全て天然のものと心がけている。

蕎麦を打(ぶ)つのは、女将の高橋祥子さんだ。
彼女は板前の旦那さんと一緒に、こだわりの詰まった店を守っている。

そば粉にこだわり、製法にこだわり、 祥子さんは今日も蕎麦をぶつ。

それにしても、女性の蕎麦打ちとはめずらしい。
彼女はいかにして蕎麦の道に進んだのか。

彼女の、会津の地に対する強い想いを知る―、

「蕎麦酒菜 祥」高橋祥子女将の物語り。

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蕎麦を、ぶつ

女将の打つ蕎麦は、つなぎを一切使わない。
粉はそば粉だけ。十割蕎麦だ。

そば粉は生き物。 蕎麦を打つ人間の、心が全部現れる。

そば粉に入れるのは水と、それからお湯だ。 お湯で蕎麦の粘りを出し、
あとから水を入れて調節する。 分量は季節やそば粉の状態によっても変わる。

蕎麦は手の感覚が勝負。 触って、肌で感じる。いわば勘だけがたよりだ。
硬かったり柔らかかったり、 失敗を繰り返しながら、段々と身につけてきた。

ところで、彼女は蕎麦をぶつ、と言う。 麺棒でぶつようにして蕎麦を打つのだ。
この打ち方で、伸し蕎麦とは違うコシが出る。

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そばも、腕も、一本勝負

高橋さんご夫婦は、 もともとこの会津の地で料理屋を営んでいた。
会津の山菜やきのこ、川魚が売りだ。

宴会に来るお客様が、蕎麦を持って来ることがあった。

まだ蕎麦打ちの経験はなかったけれど、 お裾分けにと頂いた蕎麦に触れ、
食べるうちに、 段々と蕎麦の質が分かるようになった。

そんなある日、女将は素晴らしい蕎麦に出会う。
彼女は、その蕎麦を打った人物の元に押しかけ、
なんと、そのまま弟子入りしてしまったのだ。

「私はこの蕎麦で勝負してみたい」
―こうして「蕎麦酒菜 祥」は始まった。

そば粉はもちろん会津産。 女将の打つ蕎麦は、
薄い灰色の美しさとコシの強さが魅力的。
山菜やきのこ、川魚はご主人が山に入って採ってくる。

「蕎麦酒菜 祥」で使う材料は、全てが天然のものだ。

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「祥」のこだわりメニュー

元料理屋だけあって、「祥」のメニューは多彩だ。

まずは何といっても「山菜そば」。 女将の打った蕎麦と、
ご主人の採ってきた新鮮な山菜。 つるつるしこしこの食感と、
滋味あふれる風味のハーモニー。

それから、そば粉を練った「そばがき」。
これはそば粉に自信がある店でなければ、出すことのできない品だ。

オリジナリティ溢れるメニューも揃っている。

そばがきを揚げた「グー揚げ」。見た目が拳に似ているのと、
食べたお客様がぐぅ、と唸ったというのが名前の由来だ。
味噌田楽や厚焼き卵、さっくり揚がった山菜のてんぷらに、
囲炉裏で焼く香り豊かな岩魚の香り。 お客様の声に応えてできた、
「ただのカレー」なんてものもある。

極めつけに珍しいのは、「蕎麦の刺身」だ。 わさび醤油でいただけば、
お酒のつまみにぴったりだ。 まさに、蕎麦にこだわるお店ならでは。

お酒は全てご主人が試した、会津の名酒。

店で出す器も、地元のものにこだわっている。
会津美里町の窯元(かまもと)で作られた、「本郷焼」。
好きなものを選び、時には頼んで作ってもらうのだ。

地元を意識した店づくりといえよう。

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嘘はつかない

「蕎麦酒菜 祥」では、最近、 お抹茶とお菓子のサービスを始めたそうだ。

「会津ではあまり抹茶を飲ませる店がないんですよ」 普段着でも
気軽にお茶を飲みに行ける場所が理想だという。

実は女将、店の傍ら、蕎麦打ち教室や出張蕎麦打ちもやっている。

女将の会津に対する想いは、商売への想いだ。 商売に嘘をつかない。
1人1人を大切にする、おもてなしの心。
それがまた、会津の評判へと繋がる。

正直な商売をしていれば、会津は良い場所になる。
中身のある会津になれば、お客様はきっとまた戻って来てくれる。

彼女が自分の商売に一本気なのは、
やっぱり会津への熱い想いがあるからかもしれない。

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鶴ヶ城の季節

会津のシンボルは城。 そびえ立つ鶴ヶ城だ。

真冬と、それから春が良い。

「会津の桜は東北一だ」と、女将は言う。 石垣のあたりに、
競うように咲き誇るピンク色の花々。

凛とした美しさをはっきりと示し、 散り際も絢爛で潔く、
まるで会津乙女のようだ。

それから、真冬の城の雪灯り。 ライトアップされていない時間の、
微かな雪の明るさが素晴らしい。

雪を踏んで歩く音。 冬の静かな景色に、じんと沁み渡る。

女将はこの季節たちを、こよなく愛している。

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根付く、おもてなし

この蕎麦どころ会津で、 商売を、人生を、蕎麦で勝負すると決めた祥子女将。

どんな苦難が訪れようとも、 彼女の一本気な商売は、
今日も会津の地に深く根付いている。

会津の実りや豊かな水をありがたく受けた、自然の恩恵の品。

自慢の蕎麦と、 お客様を想って作られる多彩な料理。

女将が自ら点てるお茶。

お客様や地元に暮らす人たちへ、憩いを提供する真っ直ぐな想いを届ける商いだ。

1人1人を大切にする、おもてなしの心。 満開の桜の頃に、
真冬の雪のつもる頃に、 そっと訪れるのはどうだろう―

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