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地方創生を対象とした「交付金」と「補助金」

 交付金と補助金の違いとは?

地方創生対象の「交付金」と「補助金」を紹介する前に、基礎知識として両者の意味の違いを簡単にご説明いたします。 「交付金」とは、国及び公共団体が特定の目的を持ち、法令に基づいて他の団体に交付する金銭全般のことを言います。一方「補助金」は、特定の事業を補助するために、国・地方公共団体が公共団体・企業・私人に交付する金銭とされています。 「交付金」は申請が受理されれば、基本的に満額支払われるのに対し(※補助金に類する性格のものもある)、「補助金」は特定の事業を成し遂げるために足りない分だけが補われるという違いがあります。 ここでは、地方創生を支える「交付金」と「補助金」について、それぞれの特徴を踏まえながら説明していきます。

プレミアム付き商品券をはじめとした「地方創生の交付金」

地方創生の交付金に「地域住民生活等緊急支援のための交付金」があります。これは、地方公共団体が、目的に合った施策を実施するのに使用できる交付金です。 この交付金は、対象となる施策や事業によって二種類に分けられます。地域における消費喚起の施策及びそれに直接的に効果を発揮する生活支援策が対象となる「地域消費喚起・生活支援型」と、総合戦略においてのしごとづくりなどの事業が対象の「地方創生先行型」です。 「地域消費喚起・生活支援型」のメニュー例としては、域内消費喚起を目的としたプレミアム付き商品券、域外消費に焦点を当てたふるさと名物商品券や旅行券、生活支援のための低所得者向け灯油等購入助成、低所得者向け商品・サービス購入券といった事業のほか、多子世帯支援策があります。 「地方創生先行型」のメニューは、必須である「地方版総合戦略の策定」をはじめ、UIJターン助成、地域しごと支援事業等といった働くことに関する施策、創業支援・販路開拓、観光振興・対内直接投資、多世代交流、多機能型ワンストップ拠点などが挙げられます。   なかでも地方創生先行型の基礎交付分については、内閣府地方創生推進室によってさまざまな取組事例が公表されています。 たとえば、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市。ここでは移住促進のための施策として地域コーディネーター養成機関創出事業が立ち上げられます。地域おこし協力隊を志す人や釜石市への移住を希望する都市住民などを対象として、地域づくりを体系的かつ実践的に学習できるコーディネーター養成機関を創設するというもので、大学などと連携を図って研修を企画・実施したり、潜在的なUIターン希望者の掘り起しをして移住を推進したりしています。 また、鹿児島県南部の指宿市を含む4つの市と町では、平成26年3月に鹿児島・香港間の直行便が就航したことを活用すべく鹿児島県南部広域連携海外物流構築事業を展開。香港のジェトロを窓口とし、香港のデパートで物産展を行うための商談や現地で観光キャンペーンを実施するための商談を実施してきます。 長野県小諸市では有害鳥獣である鹿を商品化する計画が進められています。農林産物を害する鹿の駆除費用を削減しつつも、鹿肉を加工し商品化を図ることで同市の特産物を創出していこうという考えです。

甲州ワインや今治タオルに使用された「地方創生の補助金」

補助金とは、政府が公益上必要だと判断した場合に、民間もしくは下位の政府に対して付与する金銭的な給付のことです。法令上、補助金の定義は必ずしも明確ではなく、補助金適正化法においても明確には定義されていません。補助金に類するものとしては給付金や助成金などがありますが、なかには実質上補助金と同じような性格を持つものも少なくありません。 地方公共団体が交付する補助金について、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」(第232条の2)と地方自治法で定められています。このことを根拠にして、ほかの地方公共団体や民間などへの補助が行われています。支出に関しては、補助金適正化法の規定に即したそれぞれの地方公共団体の規則や要綱などに準じています。 産業の振興を目的とした、他自治体の企業を呼びこむための制度などもあります。助成される金額については、建物や設備、土地などを購入した金額に対し何%と定められており、申請内容が評価の対象となり認可が降りると支給される。評価については、発注にはじまり納品、請求書にもとづく支払い、領収までという購入の一連の流れが見られます。実際に事業用に用いられているかどうかという現物確認までがなされます。   地方の産業や観光事業の活性化に関する補助金のひとつに、ふるさと名物応援事業があります。これには、製造事業者との連携を図ることによりふるさと名物の販路開拓を行う小売事業者をサポートする「小売事業者等支援事業」と、地域産業資源を活用して中小企業グループが実施する、ふるさと名物のブランディングなどをサポートする「ふるさと名物開発等支援事業」があります。 ふるさと名物応援事業の例としては、四国タオル工業組合が取り組む今治タオルのブランディングがあります。クオリティについて独自の基準を設けたり、外部の優れたデザイナーを起用したりすることで、産業観光として注目されており、この地域の観光振興に一役買っています。 また、甲州ワインのブランディングとそれにまつわる文化の観光商品としての展開に活用されている例もあります。地域の自治体やワインの事業者が商品のブランド化に取り組む他、ワインが生まれる背景となる土地の文化を感じられるワインツーリズムが展開されるなど、着地型観光産業に積極的に取り組まれています。

地方創生のために、交付金・補助金の有効活用を

交付金や補助金は、地方創生においてさまざまな内容や目的で展開されています。けっして交付金や助成金を得ることを目的とすることなく、どうすれば地方を活性化できるか、雇用を創出できるか、観光産業を盛り上げられるか、人口減少を食い止められるかなどを、既成概念にとらわれることなく柔軟な思考で考え、その目的を達成するための手段として有効活用することが重要だと考えられます。

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