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上勝町の地方創生

四国で一番小さな町、徳島県上勝町。上勝町では、「葉っぱビジネス」「ごみゼロ」に、「教育」を加えた三つの政策を中核として、「ふるさと版地方創生戦略」を策定しました。 この小さな町は、少子高齢化による人口減少や環境問題といった様々な課題を背負った、安倍政権にて創設された地方創生本部が問題視しているような超高齢化社会を先行している町です。そんな上勝町が行う独自の地方創生事業が注目を浴び、その詳細を一目見ようと、国内だけでなく外国からも問い合わせが多く、視察隊も派遣されています。それが、「葉っぱビジネス」や「ごみゼロ宣言」です。これらの地方活性化により、住民の半分が高齢者という過疎の町でありながら、町民の1割が移住者となったのです。 上勝町で施策されている地方の創生推進は、平成26年度安倍内閣の補正予算にて閣議決定された地方創生先行型交付金(※)の交付や、県の補助金や助成金といった財政支援制度を積極的に活用するとしています。 ※地方創生交付金とは石破大臣を内閣府地方創生担当大臣にむかえた安倍政権において、地方創生事業の深化や対象自治体の財政支援などを目的に支給が可決されます。

(上勝町の地方創生)=(葉っぱビジネス)

徳島県上勝町は「葉っぱをお金に変える魔法の町」と呼ばれていることをご存じでしょうか。 その“葉っぱ”とは、料理を引き立たせるために使われる葉っぱや花などの「妻もの」にあります。上勝町では「妻もの」を、独自の栽培技術と情報インフラを用いて全国へ出荷しているのです。この「彩(いろどり)事業」が成功へと至るまでの地方創生ストーリーは映画公開もされ、上勝町は“高齢者が活躍している町”として全国にその名を知られるようになりました。

ただの葉っぱに付加価値を見出した

上勝町は高齢化率が高く、かつ女性の多い町です。そんな高齢の女性でも“葉っぱ”なら扱いやすくビジネスが可能だ、というところに目を付け「彩事業」は始まりました。 自然豊かで葉っぱの多い町は全国各地にたくさんあります。しかし、その葉っぱがそのまま「妻もの」として使えるわけではありません。“葉っぱ=妻もの”ではないということです。「妻もの」に使われるべき葉っぱは、料亭などで食品と一緒に並べられるものです。そのため、色や形、均質さや大きさなどが非常に重要となってくるのです。これら素材のクオリティを持続させたまま、いつどの季節でも安定して出荷できる状態を保たなければなりません。 ただの葉っぱを、料理を引き立たせる名脇役にすること。そしてそれを、いつでもどこでも安定して出荷できること。この2点を可能にし、葉っぱの付加価値を見出すことに成功したことが、上勝町地方創生の成功の秘訣と言えるでしょう。

地方創生に必要なオリジナリティとICT

「葉っぱビジネス」が地元の活性化へと繋がった秘訣は、そのオリジナリティとICTにあります。 しかし上勝町の葉っぱビジネスの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。当時は妻もの市場が確立されていたわけでもなく、賛同してくれた農家も多くはありませんでした。そこで、開発者は料亭に約2年間自費で通い続け、妻ものの商品知識を学び、栽培技術を向上させていったのです。 妻ものをビジネスとして確立することに成功した最大のポイントは、ICTの有効活用にあります。上勝町は町内全域に、光ファイバーによる超高速ブロードバンド環境が整備されているのです。上勝町で葉っぱビジネスを手掛ける企業「株式会社いろどり」は、妻もの生産農家約150軒にパソコンやタブレット端末を貸与し、農家の方がこれらを駆使して注文を受けられるシステムを構築しました。 驚くべきポイントは、これを70〜80歳の方々が行っているということです。高齢の方がパソコンやタブレット端末を操作することは、最初は難しかったでしょう。しかし、そこには工夫が凝らされていました。個人の競争意識を刺激するような売上高や売り上げ順位などの情報を、画面上で速報するようにしたのです。すると、おばあちゃん達は農家仲間に負けてはいられないと、積極的にパソコン等を操作し、使用方法を覚えるようになったのです。いつでも受注できるよう、首からタブレット端末をぶら下げている方もいるくらいです。 上勝町では今後ICTを活用して、葉っぱビジネスだけでなく町全体の経済価値を高めていきたいと、新たな取り組みを検討しています。

上勝町の「ごみゼロ宣言」とは?

徳島県上勝町では2003年9月に、未来の子ども達に綺麗な空気や美味しい水、そして豊かな大地を継承することを目的として「ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言」を日本で初めて発表しました。 ごみを無くすなど理想論であって実現は無理だと思われがちですが、上勝町の本気度は違います。理想論を語るだけで終わるのではなく、実際にアイデアを駆使して行動に移しているのです。 皆さんの地域のごみの分別は何通りありますか?筆者の出身地は、燃えるごみと燃えないごみの2通りしかありませんでした。しかし上勝町ではなんと、34通りの分別数となるのです。これは日本一のごみの分別数になります。 また、町にはごみ収集車が来ません。町民自ら、設置されたごみステーションまで持ち込むのです。そしてごみステーションには、ごみの運搬や焼却、埋め立てにかかるコストやリサイクルにおける売り払い価格が算出して一覧表示されてあります。こうしたデータを見ることで、町民のごみゼロ運動に取り組む意識が高まるのです。 さらに、子どもの着られなくなった衣類などをリユースすることを目的として、「くるくるショップ」がごみステーションに併設されています。ここに置かれた衣類等は、町民だけでなく誰でも持ち帰って良いとされています。 人は不要になった物を、何も意識せず捨ててしまいがちです。しかし、そこにかかる費用や環境破壊、健康被害を考えながら生活をすることで、今まで捨てていたものが資源として再生するものだと気がつくのです。そうした意識を町全体で持っている美しい町が、上勝町なのです。こうした美しい取り組みに、国内だけでなく世界中が注目しています。

世界からも注目される上勝町の強み:生涯現役のモデル

高い山々に囲まれていて決してアクセスが良いとは言えない上勝町に、国民総幸福量を唱えたことで知られるブータン王国など、海外からもたくさんの視察団が訪れています。 視察団は「地域資源をどう活かしたらよいか」を学ぶために訪日し、上勝町まで足を運んでいるのです。 上勝町は四国で最も人口が少なく、かつ高齢化率は約51%と徳島県一です。しかし驚くべきことに、町営の老人ホームは利用者が減ったために潰れ、また老人一人当たりに掛かる医療費は徳島県内最下位なのです。 こういった東京都圏では考えられないようなパワフルな高齢者の存在は、上勝町の地方創生と密接に関係しています。上勝町の70代、80代の方々は、自分の足でしっかりと立って事業に従事し、社会に貢献しているという喜びを感じながら生活を送っています。 毎日余生を何となく過ごしているのではなく、明確な目標を持って積極的に考え行動している上勝町の高齢者は、まさに生涯現役のモデルであり、世界からも注目されているのです。

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