故きを温ねて
新しきを創る
日本の伝統工芸について学び、その技法を
生かしたデザインを提案。そして完成した
作品をMoMAデザインストアなどを通して
世界中に展開する。このプロジェクトの肝と
なる部分は、日本の有名な観光地ではなく
福岡県八女市にフォーカスをあわせ新鮮で
刺激的な「新しい日本」を世界にご紹介すると
いうことです。
SVA MADE IN YAME PROJECT
NYのデザイナーと八女の職人がコラボレーションして
日本の伝統工芸を新たな形に作りかえ、世界に発信するプロジェクト
福岡県八女市の伝統工芸
八女市長メッセージ
八女市 市長
三田村 統之 氏
八女は、日本国内でも有数の歴史ある伝統工芸の街として知られています。国指定伝統工芸品である八女福島仏壇や八女提灯、福岡県指定特産民芸品である八女手漉和紙、八女石灯ろう、八女矢、八女和こま、周辺の市町を含む筑後地域で生産されている「久留米絣」を含め多様な工芸品があります。その一つ一つに積み上げられてきた歴史があり、卓越した職人の技術・技能によって見る者を魅了する作品が出来上がります。この素晴らしい魅力を多くの人に感じてもらうためには、伝統的な技術を活かした新たな商品開発が必要です。八女伝統工芸とニューヨークデザインコラボ事業は2018年度から開催され、多くのデザイナーや学生の方々が八女にお越しになりました。SVAのシンクレア教授ともお会いし、交流が続いていることを大変うれしく思います。おかげさまで数多くのアイデアが生まれ、現在、商品化の検討が進められています。八女伝統工芸の新たな価値が見いだされ、世界中の人々に愛される商品が出来上がるのではないかと期待しています。
ご参加頂いた方々の声
八女伝統工芸館 館長
井上 啓時 氏
数ある日本の伝統工芸の中で、八女を選択いただき感謝の思い出一杯です。すばらしい八女の伝統産業を絶やすわけにはいかん、まさに「どげんかせんといかん!!」状態の時にこの事業が始まりました。デザイナーや学生さんたちの真剣さに圧倒され、職人さんやその周りの人達もだんだんと本気モードへ変わっていく姿に、この事業に掛ける思いの強さを感じることが出来ました。今年は新型コロナウィルスの影響で中止となりましたが、来年またいらっしゃる事を楽しみにしております。
八女市 商工振興課
鹿田 純 氏・大渕 将史 氏
伝統工芸品の生産は八女の重要な産業です。しかし、生活様式の変化によって生産額は減少傾向にあるため、新たな価値を見いだし、販路を開拓していくことが重要になっています。NYコラボ事業では海外から多数のデザイナーに来訪いただき、2週間滞在して交流が行われました。伝統工芸の成り立ちや職人の技術・技能を学んだうえでデザイン制作されるデザイナーの姿を見て、伝統工芸の良さを残した新たな商品が産まれるのではないかと期待しています。職人さんが通訳者を介さずデザイナーとコミュニケーションを取られる場面に接したり、新商品の構想を真剣にお話しされている姿を拝見するとわくわくします。
参加職人の声
八女提灯・シラキ工芸
入江 朋臣 氏
このプロジェクトに参加して本当に沢山の刺激を受けています。日本の職人とNYのデザイナーがひとつひとつ丁寧に作り上げていく伝統工芸の新しい形はとても興味深く、これからの伝統工芸品の未来にはとても大切なことだと改めて感じております。新しい風を取り入れて、伝統的な技法で作られる商品には八女のこれからが沢山詰まっている物だと確信しています。自分にとってもこれからの活動に自信を持たせてもらえる挑戦で、運営してくださっている皆さんにはとても感謝しております。
錺金具・入部錺金具製作所
入部 一臣 氏
最初にデザイナーさんに技術を説明した時、とても真剣に聞き入って下さり感動したのを覚えています。僕にとって幼いころから慣れ親しんできた身近なことも海外の方からすればすべてが新鮮に映っていたようで反応がとても興味深かったです。参加した学生さんもプロのデザイナーさんも皆さんとても真剣で一生懸命で、緊張と緩和が程よく混在し、とても充実した2 週間でした。企画を立てて運営をしてくださったニッポニアのスタッフの方々の細かい気配りのおかげで期間中は大きな問題もなくスムーズに進みました。こういった体験をさせていただき、海外とのご縁を作っていただけたことにもとても感謝しています。普段は別々で仕事をしている職人さんたちともどんどん一致団結し、チームのようになっていったのもとても素晴らしい経験でした。今後の職人人生に生かしていきたいと思っています。
手すき和紙・溝田和紙
溝田 俊和 氏
自分は以前より八女の町を海外の方が闊歩する光景を夢見ていました。八女市は京都や金沢などにも続く伝統工芸が多い町であるにも関わらず、海外の方が興味を持っていただけないことをとても残念に思っておりました。自分も手すき和紙認知拡大にて海外に行く機会が多かったので常々歯がゆく感じていたのです。そこへニッポニアの加藤さんからこの企画を持ち掛けられ、自分の思っていた理想のPR に近いプロジェクトだったので参加しました。私が仕事としている手すき和紙は、文化財の修復や表具、同じく伝統工芸品である提灯などプロを相手にする製紙のため二次製品を作るのは中々困難ですが、このプロジェクトで来日した海外のデザイナーやデザインを勉強されている方々と話をすることや、デザインや文化などについて聞くことはとても面白く興味深かったです。ニッポニアのスタッフの皆さま、八女に新たな風を吹かせてくださり本当にありがとうございます。
久留米絣・下川織物
下川 強臓 氏
2回目となる2019年は参加者も多く、ボランティアスタッフ含めて、第1回目よりも大きな規模での開催となり話題性も集めた。日本人の特徴でもある「おもてなし」精神を存分に発揮して交流会も様々な形で開催され、プロジェクト期間中は一種のお祭り状態のような感じで精神が常に高揚していた感じでした。このプロジェクトを通じて感じた大事な事は【こちらから一方的に歩み寄るのではなく、半分歩み寄ること。残り半分はこちらに歩み寄ってくれる余地を作って一緒に新しいものを作る】ということ。お互い同じ距離感で歩み寄ることができれば、なにかおもしろい(今までにない)発想も浮かんでくるような気がしています。今後も続いていくので毎年楽しみにしています。
PROGRAM DIRECTOR
SVA MADE IN YAME Director
SVA Ground Floor Incubator
Sinclair Scott Smith
ニューヨークを拠点に活動する工業デザイナー及び教育者。スクールオブヴィジュアルアーツ(SVA)にてSVAメイドイン八女とSVAの起業支援プログラムであるグランドフロアインキュベーターの指揮をとる。また同校のMFAプロダクトオブデザイン科の創始教授陣の一人。グローバル企業のデザインを多く手掛け、その活躍はデザイン、建築、ストラテジーなど多岐に渉る。プロダクトデザインではディズニーやThisAmerican Life、建築ではDKNY、Staple Design、Dolce Vita Footware、そしてストラテジーではアメックス、BMW、サムスンなどとコラボレーションしている。NYUのフィルムプロダクション学部を卒業後映画制作に携わった後、Pratt Instituteの修士号プログラムにて工業デザインを学んだ異色の経歴の持ち主。