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常光寺 大林慈空さん

山岳修行のひとつであるお遍路。お遍路を通して小豆島に魅了された僧、大林慈空さんは、その魅力を島の内外に発信しようとする。小豆島の自然、歴史、人を見つめる、一人の僧の物語り。

小豆島に点在する八十八箇所の霊場
お遍路さんを迎える常光寺の慈空さんは、
“歩き遍路”なら、島の魅力を肌で感じられるという

常光寺 大林慈空さん の物語り

03

小豆島を見つめる一人の仏僧

「縁」をとりもち、「縁」になる

一つ、歩を進めるたびに、足元から土が匂い立つ。
落ち葉が土のうえに降り積もり、湿気を含んだ自然の匂い。
その、土の匂いにふと、磯の香が混じる。

目の前が開けて、眼下に青い海が広がる。
長い山道を歩いてきた人々の、
言葉少なくなった口から歓声が漏れる。

白衣に金剛杖をつく集団を迎えるのは、
常光寺副住職の大林慈空(じくう)さんだ。
脱サラをして母の実家である常光寺を継いだ慈空さんは、
ここでお遍路さんの世話をしている。
その熱心な姿勢は自身の小豆島への思いに根差している。

初めて小豆島を遍路した時の感動を、
お遍路さんに味わってもらうための「縁」を作り、
島の人が小豆島を見つめなおす「縁」となりたい。

島の現在を見つめ、島の未来のために活動する僧、
大林慈空さんの物語り。

23

脚で越え、脚でわたる

歩いて感じる小豆島

そもそもお遍路とは、山岳修行のひとつ。
野を行き山を越え、点在する霊場をめぐる。
小豆島には八十八ヶ所の霊場が点在している。

「小豆島をめぐるのなら、歩き遍路が一番です」

こう、慈空さんは言う。徒歩、自転車、自動車、種々ある
お遍路の移動手段のなかでも、自らの脚で山を越えて、谷をわたって、
小豆島の自然を直接肌で感じるのが一番いい。

「山を登りきったあとの達成感は最高ですよ」

山を登るたびに広がる小豆島の景色に、それはまさにお遍路のハイライト。
お遍路では、いくつもの胸震わす瞬間に出会えるのだ。

およそ1200年前から現在に至るまで、多くの人がそれぞれの
想いを胸にめぐり歩いてきた。人の業から脱けたいと願い、
あるいは病の癒えるのを願い……

お遍路さんの数だけ、想いを受け止めてきた小豆島。
お遍路は、自然だけではなく、人々の想いにも触れる「縁(えにし)」となる。

33

寺を継ぐ、という決断

技術者からの転身

慈空さんは小豆島に来る前は、システムエンジニアとして、
タイトだが充実した生活を送っていた。けれども、どこかに将来に対する不安が、
霧のようにモヤモヤと立ち込めていた。

そんな中、舞い込んできたのは母親の実家を継がないかという話。
それは、小豆島の寺に来ないか、という意味だった。

かつては母の実家として何度も訪れていた小豆島。
いつしか日々の忙しさの中で疎遠になっていた。

けれども迷いはなかった。自分の進むべき道は、これだ。
すっと、胸の中の霧が晴れた。

その後一年、高野山での修業を経て小豆島に来た慈空さんは、
忘れていた島の魅力に驚かされることになる。

43

小豆島、面白い!

歩いて気づいた小豆島の「有り難さ」

小豆島に来て、霊場を巡り歩いた。直に島の自然に触れて、歴史を感じて、
人と出会って。―何て面白いところなんだ。

慈空さんの心に、有り難い、という言葉が浮かんだ。

他では味わえない、小豆島の「面白さ」に触れることができた、
「縁」に感謝する気持ちだったのかもしれない。

島の外から来た慈空さんが気づいた小豆島の「面白さ」は、
島の人たちにしてみれば当たり前のことでしかなく、

「小豆島には何にもない」

が口癖のようになってしまっている。

小豆島の自然、歴史、人―
どれも他所にはない、有り難いもの。
それを島の外に、内に、伝えたくて……
慈空さんは活動を始めた。

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お遍路で知る小豆島

新しいお遍路、「女子へんろ」

お遍路さんの数は、ここ二〇年ほどで激減している。
全行程150㎞の小豆島八十八ヶ所巡り。
歩けば一週間近くを要する。
会社勤めの身には厳しい日程だ。

それでも、人々の中の、お遍路への憧れは
決して消えつつあるのではない。

慈空さんが所属する「ショウドシマクリエイティブ」。
イベントの企画・運営、情報の発信を通して
小豆島を盛り上げる集団だ。

その中で毎回好評なのが、「女子へんろ」という企画。
八十八ヶ所霊場のうちの十数か所を、女性たちが歩いてめぐる。
島の人からオリーブの実をもらったり眼下に広がる絶景を写真に収めたり
たった一日の、お遍路のほんの一部を体験し、
彼女たちは小豆島の自然、歴史、人に全身で触れる。

この一日を「縁」にして、家へと戻った彼女たちが、
お遍路で感じた小豆島の魅力を話し伝えていく。

こうして広がる「縁」に、慈空さんは島の未来を見ている。

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島を知って島を愛する

お遍路で育む郷土愛

外から来るお遍路さんをもてなしながら、
慈空さんには気に懸っていることがある。
「小豆島には何もない」という島に根付いた考えだ。
これを、どうにかしたい。

卒業遍路、という言葉が浮かんだ。
中学、高校を卒業して島を離れるその前に、
改めてじっくりと島を歩いてみる。

郷土をもう一度見つめなおすために、
郷土のことを胸を張って語れるように、
島の外に島の魅力を伝えていけるように、
いつか戻って来たいと思えるように……。

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面白いことを面白い人と

慈空さんから広がる「縁」

島には面白い人が集まってきている。

「彼らと、協業していきたい。面白いことをしていきたい」

時空さんはこう語る。いろんな人と出会って、協力して、小豆島のために活動をする。
それが、死者と生者と仏との「縁」の中で生きる、僧としての自分にできること。

今、「ショウドシマクリエイティブ」で行っているように、
もっと、いろんな人と「面白い」ことを探していけたら―
一人二人と顔を思い浮かべ、慈空さんの胸は高鳴る。

一人の仏僧から広がる「縁」それは周りの人を巻き込んで、
小豆島全土をつないでいく。

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