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ライトハウス 仁田譲さん

お鷹の道にあるガレージ風の秘密基地みたいな店、ライトハウス。お店の店主である麦藁帽子を被ったユニークな仁田譲さんの物語り。

お鷹の道の、ほど近くに佇むカフェ
人々の休憩所であり案内所でもあるこの場所で、
小粋なマスターが笑顔で待っている

ライトハウス 仁田譲さん の物語り

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お鷹の道に響く
せせらぎを辿り

ホタルの見える小川のほとりに

強い日差しが照りつける夏の日に、
国分寺駅から南へと歩いて行く。

背中に滴る汗はいよいよその粒の数を増し、
ぼくが歩くごとに、振動で、幾筋かすーっと下に流れていった。

そこへ、涼しげな風が不意にぼくの頬をさっと撫でていく。
耳には優しげな小川のせせらぎが聞こえてくる。

「車や電車が行き来する東京にも、
こんなに心の安らぐ場所があったんだ」

ぼくの火照った体も、その涼しさに触れて、
少し回復してきたような気がする。

ここは「お鷹の道」。

6月から7月上旬にはホタルも見えるという。
この道を辿っていき、少し脇道に目を移すと、
住宅の軒先でお店を開いている、小さなカフェを見つけた。
看板を見ると、“ライトハウス”と書いてある。

「この小川の畔に、こんなオシャレな
名前のお店があるなんて。
これは、隠れた名店発見かな?」

そう思ったぼくは、ガレージ風の、秘密基地みたいな店内に、
足を踏み入れてみることにした。

3-3

ライトハウスと海の思い出

海とヨットと仁田さん

「いらっしゃーい」と、麦藁帽子を被ったユニークなおじさんが、
ぼくを笑顔で迎え入れてくれた。

自宅の駐車場を改装して作ったという、
この小さなお店の中に入ると、店内でも気分はアウトドア。
屋根もまるで簡易テントみたいで、とても開放感がある。

ぼくが伺った午後3時前後は、ちょうど太陽の光が
さわさわと差し込むころで、お店の中には“ゆったりとした時間”が、
流れているような気がした。

店内を見渡すと、ヨットに関連する部品や、
カレンダーなどがある。

ライトハウス(灯台)というお店の名前に始まり、
海に関連するものが多いのは、なんでだろう。
そう思ったぼくは、さっそくご主人に伺ってみた。
ご主人の仁田譲さんは、気さくに教えてくれる。

「湘南で20年くらいヨットをやってたんだよね。
でも筋力が必要だし、何より危ないから辞めたんだ。
本当はやりたいんだけどね…。
それに後ろ髪引かれて、海に関連する名前をつけたい、
海の雰囲気を味わえるようなお店にしたいって思ってね」

なるほど、なっとく。そうして、改めて、
このライトハウスの中を眺めてみると、
そこには仁田さんの大好きな、
海の香りが感じられるような気がした。

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ひとびとの集うのどかな休憩所

街の知識のおすそわけ

仁田さんがライトハウスを開店したのは、2009年4月。
アパレル業と中華料理店を経て、現在に至っている。

「この街を歩く人たちの休憩所が今までなかったから、
そういう役割を果たす場所として、ここを開いたんだよね」

そう言って、仁田さんは開店の理由を教えてくれる。

「ライトハウスはうどん屋さんですよね?」

ぼくはメニューを眺めながら訊いてみる。

「でも休憩所としてだったら、
うどんじゃなくても良かったんですか?」

「うん、うどんじゃなくても良かったよ。
でもね、どの季節でも美味しく、早く食べられて、
みんなが好きなものっていったら、
うどんが良いのかな、ってね」

そう言って、仁田さんはニカッと笑う。

「美味しいダシの取り方も、たまたま知っていたしね」

お鷹の道のすぐ傍にお店があって、
さらりと“ついで食べ”をするには、
確かにうどんは良いな、と思った。

お客さんは、実に色々なところから訪ねてくるという。

「せっかくだから、よそから来たお客さんに、
国分寺の知識をおすそわけできたらいいよねぇ」

おすそわけ、か。ぼくは、その言葉に
とても優しい響きを感じた。

うどんや飲み物も楽しめる、休憩所としての役割も担いつつ、
その上で、「国分寺」という街の知識をプレゼントしていく。

しかし、その中で、仁田さんは、ただ国分寺の
街のスポット紹介ばかりをしているわけではない。

この国分寺には、どんな人たちがいて、
その人らはどんな暮らしを営んでいるのか。
そういった人びとの営みにこそ、目を向けていきたい。

「景色を知るのはただ、表面を眺めているだけでしょう。
そのもうちょっと奥で生活している人たちを眺めるようにすると、
一層一層、見る景色もさ、良く感じられるようになるよね。
思い出っていうのは、そうやって少しずつ芽生えて
くるんじゃないかなぁ」

仁田さんは、そう言って目を細める。
そんな仁田さんを見ていて、本質を探るというのは、
街を知る上でも重要なことなんだ、と、ぼくは
改めて強く感じた。

国分寺の良いところ、ぼくにはまだまだ
見えていないことが、たくさんだ。

でも、焦らずに、これから、ひとつずつ、ね。

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国分寺を照らす灯台のように

この街のコンシェルジュ

お鷹の道周辺を訪ねて来たお客さんの中には、
「本当に迷っちゃったんだから!」と、
汗を流しながら、道のりの苦労を訴える人もいたそうだ。

これは、地図がいるなぁ。

そう思っていた矢先に、仁田さんは、
国分寺駅南口の文房具店・山水堂のご主人と出会い、
「こんな地図があるんだよ」と、
「ぶらぶらマップ」というものを紹介してもらった。

その素敵な地図を見た仁田さんは、
発行元「国分寺モリタテ会」の代表を務めている、
建築家の保坂さんに電話をして、早速、活動に参加していく。
「ぶらぶらマップ」という素敵な地図はあるけれど、
仁田さんは、まだまだ満足しない。

「地図や電信柱にある小さな矢印だけでなく、
ちゃんとした案内板なんかで、『お鷹の道こっち』とか、
もっと親切なガイドがあればいいよね」

これから、まだまだ良くしていく余地はあるんだな。
そう、訪れてきてくれた人たちに、
もっと国分寺のいいところを歩いてもらって、
そして、もっともっと、その良さを感じてほしい。
仁田さんが「モリタテ会」の活動に参加した理由は、
とてもシンプルだ。
仁田さんは、お客さんに地図を見せながら、

「じゃ、帰り道はここに行くと良いですよ」

「西国分寺に出るんだったら、
ついでに鎌倉街道を通ったらどうですか」

「南側に桜を綺麗に咲かすところがあるんですよ」

そんなふうに、その時、その季節に合わせて、
国分寺のみどころを紹介していく。
ぼくは感心して言う。

「仁田さんは、ここで街の案内人的な役割を担っているんですね」

「そうありたいとは思っているよね」

仁田さんは、笑顔で続ける。

「最近はやっている言葉でさ、コンシェルジュってあるでしょ。
国分寺全体とまでは言わないけれど、せめて南口エリアの
コンシェルジュにはなりたいなぁ、なんてね。
せっかくいらしてくださった皆さんに、一言二言ね」

ライトハウスというコミュニケーション・スペースを
作ったことで、自然と芽生えた街や人に対する気持ち。

国分寺を歩き、ライトハウスを訪ねてきてくれた人たちを、
気持ちよく笑顔にするためにも、
「街のコンシェルジュ」になりたい。

仁田さんの想いは、どこまでも真っ直ぐだ。
そうやって、国分寺に関わる人たちが、
よりあたたかく結びついていけたら、良いな。

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至るところに出会いあり

出会いが生んだカキ氷

テレビ番組の反響もあり、ライトハウスの
イチゴカキ氷をお目当てに、来店してくれるお客さんも
いるようす。

ぼくもさっそく話題のカキ氷を頂いてみる。

「仁田さん、カキ氷にかかっているこのイチゴ、
すごく美味しいですね!」

炎天下で喉もカラカラになっていたところに、
救いのカキ氷だった。
このカキ氷にかかっているイチゴのシロップには、
なんと果肉がたっぷり使われているのだ。

「これってどこで採れたイチゴなんですか」

「それはね、中村農園っていう、国分寺の
市内にある農家さんで採れたイチゴなんだよ。
中村農園さんとは、『ぶんぶんうぉーく』という、
国分寺を再発見するイベントから派生した、
『地域通貨ぶんじ』のイベントで知り合ったんだ」

仁田さんは、イチゴカキ氷を眺めながら、続ける。

「国分寺では、いちごを作っている農家さんは少ないんだよ。
ブルーベリーとかは、まだ多いんだけどね」

仁田さんは中村農園さんに、シーズン中に
売れ残ったいちごは、どうしているのかと
訊いてみたのだという。

「中村農園さんが言うには、残ったものや
売れない可能性があるものは、前もって冷凍しておくって
ことでね、じゃあ、その冷凍したものを使って、ぼくが
前から作りたかった、カキ氷をやってみようかっていうのが、
始まり」

なるほど、このおふたりの出会いがあったからこそ、
ぼくは今、こうして、このおいしいカキ氷を
味わえているんだな。

ひとつの出会いが“新たなもの”を生み、
その“新たなもの”が、また新しい出会いを生んでいく。

「ライトハウス」という出会いの場は、
これからどんな新しい“物語り”を
生み出していくんだろう。

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変わっていく国分寺 変えていく国分寺

未来へつなげる橋渡し役

「鍵を握るのは君ら学生だよね。活力のある街ってさ、
若い人たちが活き活きとしているんだよね」

仁田さんはいたずらっぽく笑いながら、そう言った。
ぼくは、そんな仁田さんのメッセージを聞いて、
改めて決意を固くした。

よし、学生代表で、ぼくたちが精一杯、
国分寺を盛り上げていこう!

「『国分寺物語』みたいな活動って、すごく重要だと思うよ。
君たち学生が、地域と継続的に関わっていくっていうのはね、
とても意味がある。でも、まあ、ゆるやかに、ちょっとずつね」

仁田さんはそう言って、ぼくの力みを解きほぐすように、
あたたかくて力強い言葉をかけてくれた。

「国分寺には、住民や商店会、農家さんなど様々な人たちがいる。
君たち学生諸君がこういう人たちの間に入り込んで、
血管とか神経をつないでいくようにね、
そういう橋渡し役を担っていけたら良いよね」

そうして、仁田さんは、ぼくの目を真っ直ぐ見ながら続ける。

「大事なのは世代ごとにそれぞれを認め合うこと、
お互いに興味を持つ、というかね。
無理して混ざり合うということでもなく、
大切なのは、外から見たときに、全体として国分寺が、
どういう文化の町なのかが見える、ということだよね」

そういった「全体としての国分寺」の中で、
学生の目線だからこそ見えること、
学生だからこそできること―、
まずはそのことを、ぼくたち学生は、
精一杯、大切にしていけばいいんだ。

仁田さんにお話を伺って、
素直にそう思えるようになった。

仁田さんのような人たちから、
国分寺の街に対する想いを学び、受け継いで、
そして、学生であるぼくらができることを、
楽しみながら、活き活きと行っていく。

そして、それらの活動が、どうか豊かな未来へと
繋がっていきますように。

人びとが興味を抱き合える街へ。

そして、もっともっと、魅力のある国分寺へ―。

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