平成26年9月、内閣府に「地方創生本部 及び 地方創生推進室」が設置されたことを皮切りに、「ローカル・アベノミクス」とも言うべき新たな経済政策が始まりました。11月には地方活性化を目指す創生法案が安倍内閣にて施行され、「創生長期ビジョン」と「創生総合戦略」が閣議決定されたのです。従来までの成長戦略はグローバル化への対応が前提とされていましたが、地方創生戦略は内需メインの地方創生事業、アクションプランが行われます。
地方創生の長期ビジョンとは、日本の人口問題に対する認識の統一を図り、これから目指すべき将来の方向性を提示することです。具体的には「人口減少問題の克服(2060年に一億人程度の人口を確保)」と「成長力の確保(2050年代に実質GDP成長率1.5~2%程度維持)」を意味します。
このビジョンを実現させるために、2015年から5年間の「政策目標」「施策の基本的な方針」「具体的な施策」といった具体的な方法をまとめたものが「地方創生の総合戦略」です。
この「国の総合戦略」を踏まえて、地方公共団体は地方財政状況や地域の実情に応じた「地方版総合戦略」を策定。
近年、補正予算にて地方創生の具象化を後押しする財源の確保とするために「地方交付金」が創設されていますが、平成28年度地方創生関連予算では、地方創生の深化のための交付金「地方創生推進交付金」が新たに創設されました。他にも、地方創生コンシェルジュや地方創生特区を設け、国と自治他が連携して取り組んでいます。
「地方創生」4つの戦略
総合戦略では、2020年までの5年間で達成すべき地方創生の事業目標を4つ掲げています。
(1)地方における安定的な雇用を創出する
地方に累計30万人分の若年者向け雇用を創出することを事業目標とする。
(2)地方への新しいひとの流れをつくる
首都圏から地方への移転を4万人増加させ、地方から首都圏への移転を6万人減らすことで、首都圏・地方間の転出入のバランスを保つことを事業目標とする。
(3)若年者の結婚や出産、育児に関する希望を叶える
結婚希望実績指標を80%まで、夫婦子ども数予定実績指数を95%まで引き上げることを事業目標とする。
(4)時代に合った地域をつくり、地域と地域を連携する
多世代間交流を可能にする「小さな拠点」の整備や地域間の連携を推進することを事業目標とする。
これら4つの事業目標を達成するために、以下に具体的な地方創生戦略を紹介します!
地方創生の戦略1〜地方に安定的な雇用を創出するために〜
・地域経済雇用戦略を企画し実施体制を整備する
地域が持つ特徴や課題をピックアップできる「地域経済分析システム」の開発、地域の産官学金労による総合戦略推進組織の結成、地域を支えるサービス事業の在り方の見直しなどを行います。
・地域産業の競争力を高める
新事業や新産業と雇用を生み出す地域イノベーションの推進、サービス産業の活性化やバリュー向上などを行い、若い世代の安定的な雇用を創出することを目指します。
・地方への人口還流・地方での人材育成・地方自治体での雇用対策
東京圏から地方へ約10万人の人材を還流するために、プロフェッショナル人材の地方還流、地方での女性の活躍推進、新規就農者や就業者へのトータル的な人材支援制度の整備などを行います。
・ITC(情報通信技術)の利活用による地域の活性化
雇用型在宅型テレワーカーを全労働者数の10%以上に増加させることを目指し、it利活用推進会議を開催するなど地域活性化にICTを活用します。2014年より総務省では、“ICT×地方創生”を普及展開することを目的に、全国の優良ICT利活用モデルを表彰しています。
地方創生の戦略2〜地方への新しい人の流れをつくるために〜
・地方移住の推進
年間移住あっせん件数を11,000件にするために、地方移住希望者へのフォーラム開催、自治体による移住者補助金支援制度、CCRC(継続的ケア付きリタイアメントコミュニティー)の検討、「地域おこし協力隊」の拡充などを行います。
・地方拠点強化を実践する企業数を増加させ、地方拠点での雇用数を増加させる
企業の地方拠点強化、政府関係機関の地方への移転、テレワークやサテライトオフィスでの勤務といった、遠隔勤務の推進などを行います。
・地方大学の活性化
地方での自県大学進学割合を平均36%に、新卒者の県内就職割合を平均80%にするために、地方大学強化プラン・地方学生定着促進プラン・地域人材育成プランを推進します。
地方創生の戦略3〜若い世代の結婚・育児の希望をかなえるために〜
・若い世代の経済的安定
若年層(20~34歳)の就業率を78%まで向上させること、若年層の正規雇用労働者等の割合を他の世代と同水準にすることを目指して、若者の雇用対策の推進、正社員実現加速プロジェクトの推進などを行います。
・妊娠、出産、子育てというプロセスにおける切れ目ない支援
子育て世代包括支援センターの整備や周産期医療の充実化、2017年度末までに待機児童問題の解消を目指します。
・仕事と生活の調和を実現させる
女性の第一子出産前後の就業継続率を55%まで向上させること、男性の育児休暇取得率を13%まで上げることを目指して、長時間労働の見直しや転勤の実態調査などを通じてワークライフバランスの実現に取り組みます。
地方創生の戦略4〜時代に合った地域をつくり、地域と地域の連携を図るために〜
・多世代交流&多機能型の「小さな拠点」を形成する
休校した学校の再開支援、公立の小学校や中学校の適正規模化を行います。
・地方都市の経済圏・生活圏を形成する
都市のコンパクト化や交通ネットワークの形成を行います。また、地方都市のホームとなる中心市街地を活性化させるために、包括的政策パッケージの策定を行います。
・大都市圏において、人々が安心して暮らせる環境の確保
大都市における医療・介護問題へ対応し、公的賃貸住宅団地の福祉拠点化や再生を目指します。
・人口減少などを踏まえて既存ストックの管理強化
公共施設・公的不動産を利活用するために民間との連携をはかります。また、空き家対策や推進インフラの戦略的な維持管理の推進を行います。
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