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地域密着型サービスとは?【番外編】

「地域密着型サービス」という介護サービスをご存じでしょうか? 地域密着型サービスとは、平成18年の介護保険制度改正に伴い厚生労働省によって創設された新しい介護サービス類型です。 世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本。平成27年度にも介護報酬改定が話題となり、高齢者への介護や予防に対する意識が高まっています。 全国的に高齢化が深刻な問題になっているとはいえ、市町村レベルでみると高齢化率や高齢者施設の状況など大きく異なります。そこで、地域のニーズや財政状況などを加味した市町村独自の政策を行う地域密着型サービスが誕生しました。 このサービスのキーワードは”地域密着で小規模”であること。小規模であれば街中に施設を立てることも容易です。「ちょっと行ってくる」と言える距離感を大切に、住み慣れた地域の中で利用することのできる介護サービス、それが地域密着型サービスなのです。

2025年には4人に1人は75歳以上に

地域密着型サービスは、2025年に団塊世代が75歳以上になることで後期高齢者が更に増えた場合に安心安全に暮らしていけるようにできたものです。 地域包括ケアシステムの一種とされ、地域ごとにふさわしい形での介護・福祉サービスを提供することを目的としています。

地域密着型サービスとは?

要介護者が受けられる介護サービスは、大きく分けて三つあります。一つ目は訪問看護やデイサービスといった「居宅サービス」。二つ目は介護福祉施設や特別養護老人ホームなどの「施設サービス」。そして三つ目が、介護保険法改正により新たに創設された「地域密着型サービス」です。 このサービスは”地域密着型”と銘打つ通り、以下の3つの特徴があげられます。
  • 指定権者が市町村である
  • 利用対象者はその地域に住む住民のみ
  • 施設は地域住民との交流がもてる立地に建てられる
介護サービスのうち、居宅サービスと施設サービスは都道府県が事業所指定や指揮監督等を行います。それに対し、地域密着型サービスでは市町村が事業所指定と指揮監督を行います。そのため、地域住民のニーズを反映した、より細やかで質の良いサービスを独自に提供できるのです。 また、人員基準や施設基準、介護報酬設定も、地域の実情に合わせて市町村にて決めることが可能となっています。さらに、2010年に提唱された地域包括ケアシステムにより、自治体には今まで以上に住民の日常生活に直結した医療や介護のサービスの提供が求められています。 具体的な地域密着型サービスには以下の8つの種類があります。
  • 小規模多機能居宅介護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
  • 認知症対応型共同生活介護(高齢者グループホーム)
  • 地域密着型入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 複合型サービス(小規模多機能型居宅介護 + 訪問看護など)
このうち、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と複合型サービスは2012年に導入されたサービスで、地域包括ケアの中心的サービスになると期待されています。 このような8つのサービスをもって、従来までの介護サービスでは行き届かなかった部分を補完し、認知症高齢者や中重度の要介護高齢者等が住み慣れた地域で出来る限り生活を継続できるようサポートします。

関係者全員で取り組むサービス向上の方法 (サービス評価と運営推進会議)

地域密着型サービスに求められるもの、それは以下の4つのポイントです。
  • 利用者のニーズに基づいたサービスの提供
  • 24時間365日、馴染みの職員による継続的な支援
  • 住み慣れた地域での支援
  • 地域との相互の支えあい
これら4つのポイントを疎かにすることなくサービスの質の確保と向上を目指すために、地域密着型サービスには「サービス評価」と「運営推進会議」が義務付けられています。 サービス評価は、自己評価と外部評価(第三者評価)の二つからなり、利用者一人ひとりに対して「地域の中で自分らしく生活するための支援が継続的に行われているかどうか」を年に一回判定します。 運営推進会議は、外部の要望や助言を受けサービスの向上を図り、また地域や行政との連携・交流の場として2ヶ月に1回以上定期的に開催されます。 これら評価や会議において重要なことは、事業者を中心として行政や地域関係者、利用者家族といった関係者全員が参加するということです。評価の結果は公表され、それぞれの立場で役割を再認識しながら質の向上を図ります。これより、密なネットワーク構築と地域全体の高齢者ケア力向上、そして利用者家族の安心感を得ることができるのです。

地域密着型サービスにおける問題点

法改正により地域密着型サービスが創設され、全国統一とされていた介護保険サービス事業も市町村による独自の政策が進められるようになりました。しかし、それに伴い問題点も浮上しています。

◆自治体間でのサービス格差

小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの整備において、自治体間でサービス内容に差が生じている事が、特定非営利活動法人「全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会」の調査研究により明らかになりました。 平成22年に地域包括ケアシステムが提唱されてからは、その差が顕著となっています。積極的な自治体では、地域密着型サービスを地域包括ケアの拠点として位置づけ、介護予防や地域交流のスペースとして活用しています。事業者と地域住民が力を合わせて地域包括ケアに取り組む町づくりに成功した例と言えます。 こういった格差に対処すべく、地域密着型サービスの整備が進んでいない自治体へのノウハウ提供が急がれています。

◆希望するサービスを行っている自治体への住民票の移動

上述したように「自分の住んでいる自治体には求めるサービスがなく、隣の自治体にはそのサービスがある」というサービスの差が自治体間に生まれています。これにより、住民が隣の自治体へ住民票を移しサービスを受けようとするケースが多く見られたのです。 サービス目当ての転入は「住み慣れた地域で継続的に介護を受ける」という地域密着型サービスの本来の目的から外れることになります。 こうした地域密着型サービス目的の転入を防止するために、様々な自治体で対策が取られています。千葉県松戸市の場合、サービスを受けるためには原則として3カ月以上松戸市民でなければならないとしています。また、大阪府羽曳野市ではこうした転入を脱法行為と位置づけ、サービス提供施設に「入居事前届出書」の提出を義務化しています。

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