石巻市の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」
宮城県の東部に位置しており、県庁所在地の仙台市に続き県内第2の人口を擁する石巻市。東日本大震災による被害からの復興を通じて、世界的な復興モデル都市を目指しているまちです。
石巻市では、平成27年に入り「石巻市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定。この戦略に則り、人口減少の状況を捉え、雇用の創出および確保、生活全般の環境向上、育児環境の向上などさまざまな観点から対策に取り組む方針です。
平成27年5月に同市は「石巻市まち・ひと・しごと創生総合戦略推進会議」を発足。目的は「石巻市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の進捗マネジメントをしっかり行い、市民からの地方創生にまつわる意見や要望などを実行することです。
石巻市の地域再生計画、はじまる
平成26年「地域再生法の一部分を改正する法律」が第187回臨時国会で可決され成立しました。これにより、地域活性化のプロジェクトをひとまとめにして実現する地方創生スキームが構築されました。それぞれの省庁が有する地域活性化に関するプロジェクトを統合的に進め、より意欲の高い地域へと集中して政策資源を投入し、政策効果を最大限に発揮させるのです。
この法律は、国家において最も重要な政策のひとつ「地方創生」に直結します。石巻市は地域再生計画の認定申請を平成26年12月付けで行っており、平成27年1月22日に晴れて改正地域再生法に基づいた第1号の認定を受けるに至りました。
こうして石巻市の地域再生計画は、内閣府および様々な府省から強力なバックアップを受けられるようになり、さらなる取り組みの強化、スピードアップが期待されるようになりました。また、この地域再生計画が認定されたのと時を同じくして「中心市街地活性化基本計画」も発効、活気ある中心市街地づくりを推進していく体制も整いました。
現在、認定された地域再生計画に基づいて〈東日本大震災で被災された方たちをサポートする地域ケア〉と〈復興まちづくり〉を展開させ、地方創生の実現に向けた取り組みが全力で進められています。
石巻市の地域再生計画 3つの柱
平成27年1月に内閣総理大臣の認定を受けた、石巻市の地域再生計画。その名称は「東日本大震災からの復興まちづくりと被災者を支える地域包括ケアの展開」に決まりました。
この計画は、下記の「3つの柱」を軸にして進められます。
(1)津波復興拠点を核とした地域包括ケアの展開
・次世代型地域包括ケアシステムの構築
・JR石巻駅前の津波復興拠点化
(2)かわまちづくりと連動した賑わいと安らぎのある、歩いて暮らせるまちづくりの推進
・中心市街地の商業・観光拠点づくり
(3)文化芸術活動の推進による人との豊かなふれあいと、歴史的資源を活かした安らぎのある空間づくりの推進
・複合文化施設の建設、歴史的建造物等の保存・整備・活用
出展:地域再生計画|石巻市
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10051050/0033/20150121153717.html
(1) 津波復興拠点を核とした地域包括ケアの展開
1本目の柱は「津波復興拠点を核とした地域包括ケアの展開」。石巻市の都市機能拠点であるJR石巻駅前および周辺地域に医療や福祉、防災、行政などの拠点機能を集めます。駅前の市役所そばに石巻市立病院を移転したり、市立病院と連携して地域包括ケアの総括を行う拠点となるセンターや防災センターを整備したりすることにより、万が一災害が起こった際の避難をはじめ、医療や行政機能の維持、市民のくらしの復旧サポートを早く確実に行うための津波防災のためのまちをつくっていきます。
また、医師会など医療と介護の組織が市と連携を図ることにより、何らかの理由で支援が必要になった人たちもそれまでと変わらず住み慣れた土地で暮らすことができるよう「地域包括ケアシステム」を構築しています。これは、支援が必要な人たちが行政や医療機関のサポートを受けられるだけでなく、市民どうしが支え合ってさまざまな立場や年代の人たちが健康な心と身体で共存していけるまちづくりを目指すものです。
(2)かわまちづくりと連動した賑わいと安らぎのある、歩いて暮らせるまちづくりの推進
石巻市の旧北上川の中瀬は漁業や物流業、造船業で栄え、「石ノ森曼画館」をはじめとする施設が建ち水辺環境を活かしたイベントが開催されるなど、市民の憩いと賑わいの場として発展してきました。ここに震災から得た教訓を活かすまちづくりをプラスし、コミュニティとして整備を進めることで復興の象徴として掲げ、周辺の定住人口の増加への寄与を図っています。
また、中心市街地においても石巻市の産業・観光・交流の拠点となるようなマーケットの整備、水辺環境と緑を満喫できる遊歩道の整備を通して、当該地域の人口増加を狙います。
(3)文化芸術活動の推進による人との豊かなふれあいと、歴史的資源を活かした安らぎのある空間づくりの推進
文化や芸術の側面から、被災した市民の精神的充足、心の豊かさを取り戻す支援です。博物館や文化ホール、生涯学習施設としての機能を併せ持った複合施設をつくることで市民の文化芸術活動をサポートしたり、石巻市が有する歴史的建造物「旧石巻ハリストス正教会教会堂」、石巻で最初の百貨店である「陶芸丸寿かんけい丸」を活用して津波から生き残った文化財を展示したりすることで、市民の心の支えとしまた観光資源としても役立てていく考えです。
過去を教訓とし「あらたな石巻市を目指して」
石巻市では、「石巻市震災復興基本計画」を掲げ、災害に強い・減災を目指した新しいまちづくりに加えて、震災を忘れ去らぬよう震災伝承・震災遺構の保存も進め、石巻南浜津波復興祈念公園の設立を目指しています。
石巻南浜津波復興祈念公園は、遺構のほかに中核的施設の建設も進めています。
中核的施設では災害による被害や映像などの展示がされる予定です。教訓シアターでは津波の恐ろしさを映像で学ぶことができ、震災を経験していない次世代の子供たちやほかの地域の方への教訓としても学べる施設ができあがりそうです。
令和3年3月上旬の展示公開が目指されています。
このように石巻市では、まちを元通りの状態にすることにとどまらず、震災から得た教訓をもとに、今あるまちの良いところを活用しながら必要に応じて整備や拡充を進め、そこに住む人々や観光で訪れる人たちに優しいまちづくりを目指しています。誰もが安心して訪れることができ、暮らすことのできる地域づくりを目標として、石巻市は地方創生への道を着実に歩んで行っています。